神保町まんてん
神田神保町と聞くとカレー屋を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。
私は神保町界隈に行く時はあえて予定を午前中(あるいは午後の遅い時間)にスケジュールして、昼ごはんは必ずカレーを食べることにしている。私が学生の頃からお世話になっているエチオピア、ボンディと並んでつい足が向いてしまう「まんてん」について今回思うことを書いてみる。
まんてんは1981年に創業した神保町カレーの老舗的存在だ。
この街のカレー屋の先駆けと言われるボンディが1978年の創業なので、神保町カレーの歴史を語る上で外すことのできない先頭集団と言っても良い。
店の前に佇むこのショーケースを見てほしい。
世界的にインフレが進行しラーメン1杯1000円を超えることが珍しく無くなってしまった昨今、このクラシックなショーケースの中に佇むカツカレーは650円なのだ。ここは昭和のまま何もかもが止まっていると言っても良い。
私がいつもオーダーするのはカツカレージャンボにウィンナートッピングしたもので、なんとお値段850円。
まんてんのカレーは独特で、インドカレーとも欧風カレーとも違うカレーだ。おうちカレーのようでもあるし昭和の街の食堂のカレーのようでもあるが、そのどちらとも違うカレーだ。ラーメン二郎を指して二郎というジャンルであると形容するように、まんてんもカレーではなくまんてんというジャンルなのではないか。
薄く伸ばされたカツにたっぷりかかったカレーはあまり辛くないので、手元にあるカイエンペッパーをかけることで辛さを調整する仕組み。デフォルトだとあまり辛くないので、辛いものが得意ではない人でも大丈夫。
オシャレとは程遠い盛り付けも素晴らしく、昭和感に溢れている。
表面張力を破り器から溢れ出すカレーを見てほしい。この色、この艶感。カレーの洪水。たっぷり入った挽肉と感じることができる。
まんてんの特徴はカレーだけではない。
注文を取り終えると間髪入れずにスプーンとお冷、アイスコーヒーが供される。このアイスコーヒーが濃くて美味しい。エスプレッソのような旨味がある。カレーを食した後に一気飲みするのが通だ。
平日のランチタイムに行くと当然のように行列ができているが心配はいらない。
まんてんのオペレーションは素晴らしい速さなので、「これは1時間待ちかな…」と思うような行列があったとしてもスイスイと前に進むので何も考えずに並ぶことをお勧めする。素晴らしい店のオペレーションと食べたらすぐに席を立つ客層の速度感が合っているのだ。
大将がお客を威勢よくカウンターに案内するその前で盛ったご飯に素早くカレーをかけ…
サクサクのカツを載せたらもう一度カレーをかけて…
あっという間にカレーがカウンターを跨いでこちらにくる。
カツカレージャンボウィンナー載せが着丼。この真っ赤なウィンナーが昭和感全開でとても良い。
この素晴らしいオペレーションを別の角度からもう一度。
大将がご飯を盛り…
揚げたてのカツとウィンナーを乗せてカレーの二度がけ…
興奮のあまりブレちゃった!
カウンターに着丼!このカウンター角席はまんてんのアリーナ席だ。
シンプルな旨味のカレーにカツの衣から滲み出た旨味が一体となって白米に絡むので、スプーンが進み半分食べ終わった頃から先にまた別のうまさを感じる。こだわりの製法を語る訳でもなくシンプルなカレーなのだが、野菜の甘みと肉の旨味がいい塩梅に溶け合ったカレーだと思う。
まんてんは決して安さが売りのカレー屋ではなく、素晴らしいクオリティのカレーを供してくれる神保町最後の楽園だと思う。
着丼する際の店主の掛け声がいつも「申し訳ないっ‼︎」なのも面白い。
並んでいる私たちにも「申し訳ないっ‼︎」だし、山盛りのカレーを出す時もお代を受け取る時も「申し訳ないっ‼︎」が掛け声なのだ。そして「申し訳ないっ‼︎」という店主の声に背中を押されて私たちは店を後にするのである。
ご馳走様でした!
カレーライスまんてん
11:00~20:00(月-金)
11:00~16:00(土)
定休日:第2、第4土曜日、日曜日、祝日